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偽物女優【恋プロ長編◆裏】

第2章 身代わり


「よく似合ってるよ、密花!」

物思いに沈んでいた思考が一瞬にして冴えわたる。

鏡のなかでは、髪を編み込みCMの衣装を纏った自分が見返していた。


純黒を基調とし、胸元で紅薔薇がそっと咲いているのが

大人びた印象を与えるそのドレス。


スカート部分は人魚の尾ひれのように

膝あたりまで身体の線にぴたりと沿い、女性らしい線の細さを強調していた。


ふくらはぎから足首にかけてはふわりと広がり

蝶の羽のごとくひらひらと舞う。


「ありがとう。行ってくるね」

密花ならどう答えるかと載せかけるが、すぐに思考から消し去った。


(私は、私の知ってるあの子を演じるだけ)

明るく社交的で、だけれど泣き虫で寂しがり屋。

それが、自分の知る妹だから。


(あなたの本心は、今はまだわからないけど。

きっと見つけるから)

そう信じて、つま先を目指す。





………それが甘い考えだと知らずに。
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