第1章 鈍感監視者さんと狛枝くん【狛枝凪斗】
まだ返事をした訳ではないのに、どうやら彼の中では一緒におでかけする事は決定事項らしい。先程の卑屈さからは考えられない強引さに、思わず苦笑いをしてしまった。
……でも先程言った通り、私は彼らの教師でありあくまでサポートをする側なのだ。だからもちろん希望のカケラは集まらないし、狛枝くんの為にならない。でも断ったらこの笑顔は消え去りそうで、それはそれで何だか忍びない。
自分では判断がつかず、同じ立場であるウサミちゃんに助けを求めるように視線を向けると、彼女はハッとした様子を見せて「そ、そうでちゅよね……」と呟いた。
「いけない禁断の予感がして、つい興奮して狛枝くんを応援してちまいましたけど、今冷静に考えればそれは」
「はあ……」
「「え」」
ウサミちゃんの言う、いけない禁断の予感というのはよく分からないけど、どうやら今まで興奮状態だったらしい。でも今はもう我に返り、監視者らしく真面目な表情で何かを言おうとしたその時、狛枝くんからそれはもうがっかりした様なため息が聞こえてきた。
それに驚き、ウサミちゃんと顔を見合わせてから狛枝くんに目を向けると、先程のため息と寸分違わない表情をした彼がウサミちゃんを冷ややかに見つめていた。
「酷いよウサミ。さっきまではあんなにボクの事を応援していたのに、そんなにあっさり手の平を返すなんて」
「こ、狛枝くん……そ、それはすみまちぇんと思ってまちゅ…。でもあちしは」
「上げて落とす、それがキミのやり方なんだね。……ウサミには失望したよ」
「ほえ?……ほわわわわっ!?」
「こ、狛枝くん…!それはいくらなんでも言い過ぎです……!」
「……確かに、ボクごときがこんな事を言える立場じゃないって分かってるよ?でも事実だよね?さん」
「そ、それは……」
確かに狛枝くんの言う通りなのかもしれない。でも、ウサミちゃんだってわざとした訳ではない。結果的にそうなってしまっただけで、彼女の本意ではない筈だ。
だから先程の言葉を撤回してもらおうと口を開いた時、ウサミちゃんが弱々しく首を横に振るのが視界に入った。