第3章 恋のキューピッドはノート様!?【狛枝凪斗】
「!」
そう、うんうん悩んでいる私の目の前に、突然ズイッとタオルが現れた。言わずもがな、私が先程まで狛枝くんの頭を拭いていた時に使っていたタオルだ。
それに驚き顔を上げると、狛枝くんがこちらにタオルを差し出していた。その顔は、少し遠慮がちに微笑まれている。
「えっと、また拭いてもらえると…嬉しいな」
「うえっ!?」
「駄目…かな?」
「え、えっと〜……」
表情と同じように、遠慮がちに頼んでくる狛枝くんに言葉が詰まり、返事に困ってしまった。
……駄目というか、むしろ私にとってはまたとない機会だ。でももう、先程のような平常心ではいられず、絶対挙動不審になってしまう自信があった。そんな事になったら、勘のいい彼の事だ。きっと気付かれてしまうだろう。
(狛枝くんの事が好きって気持ちが……)
そう、何を隠そう、私は今目の前にいる彼……狛枝くんの事が好きなのである。
いつから、なんて正確な日にちは覚えていないけど、一緒の作業場だった時は勿論、違う場所だった時も「頑張ろうね」と毎日声をかけてくれる狛枝くんに、いつしか目で追っていた。きっとこの頃から恋心を抱き始めていたんだと思う。
そうして課題をこなしたり、一緒におでかけしていく内に、狛枝くんの事が好きだと自覚したのだ。
……ここは自分の欲望に忠実になった方がいいのか。でもそうしたら気付かれてしまう恐れがある。
(どうしよう……!)
どちらにするか決められずに頭の中で葛藤していると、不意に狛枝くんの眉が下がり自嘲の笑みが浮かんだ。そしてタオルを持っていた手がそっと下り、顔を俯かせた。
「……馬鹿だなぁ、ボクは」
「え?」
「ううん、何でもないよ!……困らせてごめんね、さん。ボクみたいなゴミクズが超高校級であるキミの手を更に煩わせようなんて、図々しいにも程があるよね」
「あ……ま、待って!」
「後は自分でするよ。ありがとう」と笑いながら立ち上がり、コテージを出て行こうとする狛枝くんを慌てて呼び止める。すると彼は不思議そうに振り返り、首を傾げた。