第3章 恋のキューピッドはノート様!?【狛枝凪斗】
「そのメダルは砂浜にある、"ウサウサヤシーン"に使えるでちゅよ!」
「あっ、あれだね」
ウサミちゃんから使い方を言われて、彼女の言う通り砂浜にあるヤシの木に模した機械の事を思い出す。木の幹の真ん中ぐらいにウサミちゃんの顔があり、口の中は穴が開いてあったからそこにこのメダルを入れるのだろう。
(……せっかくだし、さっそくやってみようかな)
私は貰ったウサミメダルを落とさないようにギュッと握りしめ、ウサミちゃんに笑顔を向ける。
「ありがとう、ウサミちゃん!さっそく使ってみるね!」
「ふふふ。いい物が当たるといいでちゅね」
その会話を最後にウサミちゃんと別れ、私はウサウサヤシーンがある砂浜に足早に向かったのだった。
(……そして、意気揚々とやった結果が、この"KISSノート"だったんだよね……)
最初は何でただのノートの表紙にKISSなんて書かれてるんだろう、と疑問に思ったけど、それは開いてみたら解決した。表紙の裏に説明が書かれていたのだ。"他人の名前を書くと、その人物とキスが出来るというおまじないノート。ただし、このノートを一度でも使うと心が失われる"と。
……私はどちらかというと占いやおまじないの類いは信じない方で、もしこの"心が失われる"事が本当だったら、このノートに名前を書く意味もメリットもないだろう。
(……でも、それが嘘で…後は本当の事だったら……)
「っ……」
この説明文を見た後に、思わず思い浮かべてしまった人物をまた頭の中で思い描いてしまったその時––––
「さん?正座なんかしてどうしたの?」
「のわあああっ!?」
突然後ろから聞き覚えがありすぎる声で呼ばれ、驚きすぎておよそ女の子らしからぬ声が出てしまった。それを恥ずかしく思いながらも慌てて振り返ったその先で、私はまた奇声を上げて驚いてしまった。何故なら––––
「何でずぶ濡れなの!?」
聞き覚えがありすぎる声の主……狛枝くんが全身びしょ濡れで立っていたからである。でも、彼はあまり気にしていないのか、私の質問に笑顔で答え出した。