第2章 希望を前に幸運はわらう【狛枝凪斗】
「んんっ……」
その瞬間、先程とは比べられない程のゾワリとした感覚が襲いかかり、思わず鼻にかかったような声が漏れてしまった。
途端、まるで全身の血が沸騰したかのように熱くなる自分の身体。きっと、今の私の顔は見るに耐えない顔をしている事だろう。この暗闇で、相手に見られていないのがせめてもの救いだ。
「……っ!?」
そうホッとしたのも束の間、唇に触れている狛枝くんの指がピクリと小さく揺れたと思ったら、突然グッと腰を引き寄せられ更に密着し––––
「んんっ……!?」
明らかに指とは違う、"何か"が唇に触れた。その"何か"は少し冷たくて、少し湿っていて、すっぽりと私の唇を覆っている。
「……っ!?」
と思ったら、考える暇もなくパッと一気に視界が明るくなり、ざわざわと周りが騒がしくなった。でもそんな雑音も、今の私には何もかも遠くに聞こえる。何故なら––––
「…………」
目を閉じている狛枝くんの顔が目の前にあり、唇を覆っていた"何か"が彼の唇だと分かったからだ。
狛枝くんにキスをされている。
どうしてそうなったのか分からない。けど、その事実に心底驚き、理解した瞬間尋常じゃないくらい心臓が大きく高鳴り、自然と目の端に涙が滲んだ。
慌てて離れようと、狛枝くんの胸に手を置きグッと押すけどビクともしない。それでも諦めきれずに続けていると
「んむうっ……!?」
腰に回されていない方の手で後頭部を押さえられ、それと同時にぬるりと狛枝くんの、唇とは違う熱い舌が口の中に入ってきた。そして、まるで生き物のように口内を動き、無防備でいた私の舌を捕まえて絡められる。
……キス…ましてや、口の中に舌を入れられ深いキスをされるのなんて初めて。何もかも初めて尽くしでどうすればいいのか分からず、ただただされるがまま。