第2章 希望を前に幸運はわらう【狛枝凪斗】
「んぅっ……ぷはっ……!」
頭の芯が痺れてきて立っているのもやっとな頃、まるでタイミングを見計らったかのように狛枝くんの唇が離れていった。その際、透明な糸が引いてぷつりと切れたのを見て、何でかは分からないけど恥ずかしい気持ちが込み上げてきた。
「はあ…はあ……」
唇は離してくれたけど、身体は未だに密着していて離してくれない。
どうして離してくれないのか、そもそもどうしてキスをしてきたのか理由を聞きたいのに、息が全然整ってくれなくて話す事も出来ない。だから、目線で訴えるようにあらゆる疑問を瞳に込めて狛枝くんを見上げた時、私は気付いた……いや、気付いてしまった。
「……っ!?」
唇の端から流れる唾液を拭き取りもせず、青白かった顔を赤く染めさせてこちらをじっと見つめている狛枝くんに。
その表情はうっとりとしていて、見つめてくる瞳は希望と絶望、そして狂気がごちゃ混ぜになったようなもので。それを見た瞬間、ぞくりと背筋に冷たいものが走り、目を見開いて狛枝くんをただ凝視する事しか出来なかった。
そんな私の様子に気付いているのか、それとも気付いていないのか分からないけど、彼は表情をそのままに目と唇を三日月型に歪ませ––––
「見つけた」
そう小さく……しかししっかりと呟き、綺麗にわらった。