第2章 希望を前に幸運はわらう【狛枝凪斗】
そう、表情筋が緩くなるのを自覚しながらも言い切ると、先程までの狛枝くんの表情が崩れて、まるで信じられないものを見たように大きく目を見開いたその瞬間––––
––––ピピッ。
「……っ!?」
電子音が響いたと思ったら、次には視界が黒く塗りつぶされた。……もしかしなくても停電だ。
「うわっ、停電だよ!」
「おいっ、何も見えねーぞ!?」
「ま、真っ暗だよ!もうお先真っ暗だよ!」
「み、みんな落ち着いて!こういう時は落ち着かないと!」
「わーん!足踏まないでよー!」
突然の停電に、みんながバタバタと騒ぎ出す。でも、そんな叫び声も、今の私には遠く聞こえていた。
(し、しまった!停電の事、すっかり忘れてた!)
輝々から、もしかしたら停電が起こるかもしれないと言われていたのに、狛枝くんをどう説得するか悩んでてすっかり頭から離れていた。
ダラダラと冷や汗が流れる中、厨房にいるであろう輝々から「まったく、これだからは……」といった幻聴が聞こえてきたような気がした。
(い、いや待てよ!希望を捨てるにはまだ早い!)
停電になったのはついさっき。この暗闇の中、狛枝くんがどう動くのかは分からないけど、行動される前に捕まえればいいだけの話だ。
そう思い至った私は、まだ彼がそこにいるのを願いながら手を伸ばし、何かを掴んだ感触が伝わってきた。……形からして、狛枝くんの腕だろうか。もしかしたら違うかもしれないけど、何にせよ狛枝くんを捕まえる事が出来た。
「お前達落ち着け!俺が今から事務室に行ってブレーカーを上げに行く。それまで誰1人、そこから動くなよ!」
振り解かれないように両手でしっかりと持ち直していると、十神くんからそんな言葉が投げかけられた。この暗闇の中で、どうやって正確に動いているのか分からないけど、宣言通りに十神くんはブレーカーを上げに行ったのだろう。扉を開く音が響き、そして閉まった。
一瞬の静寂の後、次々にみんなから安堵の声が上がっていく。それを聞きながら私は顔を上げて、周りのみんなに聞こえないように小声で言う。