第2章 希望を前に幸運はわらう【狛枝凪斗】
そんな自分に嫌気が差しながらも廊下を進み、ホールへと続く扉がある広い廊下を角からこっそり見やれば、そこにも狛枝くんの姿はなかった。それを確認して、足早に厨房のドアの前まで行く。順調とはいえ、狛枝くんはここを掃除しているからいつ鉢合わせするか分からないからだ。
(まあ、どのみちパーティが始まったら嫌でも顔を合わす事になるんだけどね……)
出来るだけそれまでには心を決めなくちゃな、と思いながら厨房のドアを開けて、中にいる輝々に「ただいま〜」と言おうとした。でも、私の口から音が出る事なく半開きに終わってしまい、先程まで考えていた狛枝くんの事が一気に吹き飛んだ。何故なら––––
「……っ!?」
ドアを開けた瞬間、こちらを勢いよく振り返った輝々の顔が真っ青だったからだ。モノクマからコロシアイを、自分達の記憶を奪われていると言われた時みたいに。
輝々は私と目が合うと、明らかに安堵したような表情になり「おかえり、。遅かったね」と笑いながら言ってくれた。でも、その笑顔が無理に作られたものだと分かって、しかも先程の表情が頭から離れなくて私は返事を返せずにいた。
(ど、どうして……?)
せっかく、十神くんの提案のおかげで輝々の顔から笑顔が戻って来ていたというのに。
遅くなったとはいえ、離れていたのはせいぜい数十分くらいだ。その短い間に、一体輝々の身に何が起こったというのか。
疑問が頭の中でぐるぐると渦巻き、未だに返事が出来ないでいると、輝々がまた無理に笑いながら話しかけてきた。
「んもう、どうしたのさ。そんなにぼくを見つめて。……あっ、もしかして、ついにぼくの魅力に」
「やめて」
「!」
……確かに、私は輝々に笑って欲しかった。ここに来る前は毎日見ていた、あの優しい穏やかな笑顔を。でも、今輝々が浮かべているのは、無理に作られた偽物の笑顔で。
そう笑みを見た瞬間、あんなに声が出せなかったのに、気付いたら否定の言葉を口にしていた。