第2章 希望を前に幸運はわらう【狛枝凪斗】
初めてここに来て自己紹介した時、私は超高校級の肩書きと一緒に自分の夢も話したのだ。「自分の作ったお菓子でみんなを笑顔にしたい」と。
でも、まさか覚えてくれている人がいるとは思わなかった。その後はモノクマやコロシアイなど、怒涛に色々な事が起こったから。
驚きすぎて思わず狛枝くんを凝視していると、彼はキラキラと瞳を輝かせながら口を開いた。
「ボクが忘れる訳ないじゃないか!超高校級のパティシエである、さんらしい素晴らしい言葉だったよ!」
「そ、そんなにかな……?」
「うん。ボクみたいなゴミクズに言われるのは嫌かもしれないけど、もっと自信を持っていいと思うな」
「そんな、全然嫌じゃないよ。……ありがとう」
何だろう。まさかこんなに褒められるとは思わなかったから、とても照れ臭い。
頰が赤くなっているのを自覚しながらもお礼を言えば、狛枝くんは一瞬虚をつかれたように目を丸くした後「……こちらこそありがとう」と何故かお礼を言われた。
「それと、さんなら大丈夫。絶対みんなを笑顔にする事が出来るよ」
「…………」
「……さん?」
狛枝くんはただ純粋にそう思ったから言ってくれたのだと、彼の笑顔を見れば分かる。でも、彼の言う「みんな」の中に狛枝くんは入っていないように思えて。
怒りにも似た、自分でもよく分からない感情を抱きながら狛枝くんを見つめると、彼も私の変化に気付いたのか、少し冷や汗をかきながら私を呼んだ。
「……私が言った「みんな」の中には、ちゃんと狛枝くんも入っているんだからね」
「えっ……」
「あっ……!?」
思った事をそのままボソリと呟いてしまったけど、今冷静に思えば何だかとても恥ずかしい事を言ってしまったように思えて。
「え、えっと…!そ、そういう事だから……!」
途端に急速に上がっていく体温に戸惑いながらも、これ以上狛枝くんの顔を見る事が出来なくて。
顔を背けながら足早に横を通り過ぎようとした時、パシリと腕を掴まれた。その感触に驚き思わず顔を上げると、頰を赤らめ嬉しそうに笑っている狛枝くんと目が合った。