第2章 真夏の邂逅
波打ち際から少し離れた場所にサンダルを置いて、ざぶざぶと海に踏み込む。ひやりと感じる冷たさに人心地つき、浮輪によじ登った。晴天の下、浮輪の穴に嵌って海を漂っていると、此の侭眠ってしまいそうな麗らかさを覚える。如何にかして、海と空の隙間に入り込めないものかと、泥々に溶けたチョコレイトのような思考回路で模索するも、手を伸ばした所で空にも海にも成れはしなかった。
遠くに聞こえる件の男たちの騒ぐ声が、思いの外、不快ではない事に気付いたのは、照りつける日差しに肩が痛み始めた頃だった。見た目からして厳つい男たちに近寄りたくはないが、遠くで楽しそうにしてくれる分には、何の問題もない。他人が喜んでいようが、悲しんでいようが、の知ったことではないが、視界に入る以上、泣かれるよりは笑っていてくれた方が、幾分か気分は善い。
水面をじゃぶじゃぶと漂うだけの海水浴で、いい加減、丸焦げになりそうな日差しに焼かれ続けるのも不安になり、は浮輪を引きずって浜辺に上がる。並べて置いたサンダルは、満ちた潮の波打ち際に近づいていて、あと一歩遅ければ流されていたかもしれなかった。
件の男たちの横を、今度こそすんなりと通過して、宿に戻る。浮いていただけのとは違い、浜辺であることを余す所なく満喫しているようで、最早此方には見向きもしなかった。
備え付けられたビーチ利用客専用のシャワーを浴びて砂を流すが、背中から腕まで日焼けでヒリヒリと痛み始めて、難儀だった。矢張り海には行くものではないなと、は後悔する。日がな一日中居着いていた、大屋根のある屋外プールが一時利用不可でなければ、こんな事にはならなかったと、日に焼けて痛む腕を眺めて、眉間に皺を寄せた。半日経っても未だ、プールは利用不可の立て札付きだ。
部屋に戻ってから、去説何をしようかと悩むものの、触れるだけで痛む日焼けに耐えかねて、宿のエステサロンに足を向ける。しかし日焼けにはトリートメントは厳禁だと、しこたま怒られてしまった。普段なら追い返される所らしいが、今は他の宿泊客がいない所為か暇を持て余していると、大量の保湿用品を並べ立てた半ギレのエステティシャンに、日焼けを見せるように命じられた。