第6章 タピオカミルクティ 【for 春鹿様】
般若の形相でタピオカミルクティに噛り付いた芥川は、其れを咀嚼するに従って、緩やかに相好を崩す。も釣られて、立ち上がる赤子でも見るような、緩み切った表情で見守る。妖怪百面相を眺めていた中也もまた、面白そうに笑って問いかけた。
「美味いか?」
「もう少し、甘くない方が」
財布から真っ黒なカードを取り出して、中也は其れを芥川に差し出した。
「好きなだけ買ってこいよ」
どろどろと緩んでいたは、其の台詞にはっと我にかえる。慌てて財布を取り出し、万札を3枚、芥川に握らせた。
「カードが使えないと、いけないから」
右手に中也のブラックカードを、左手にの3万円を握りしめ、芥川は外套を翻して颯爽と扉に向かう。
「店舗ごと、買い占めてきます」
廊下の向こうに消えてゆく芥川の背中に向かって、中也は舌打ちをした。人様のカードを使って一体何をするつもりか。
「店は要らねェぞ!」
「お店が欲しいなら、私が買ってあげるよぉ…」
芥川の勢いに腰を抜かし、床に這い蹲っては囁く。馬鹿しか居ねェのかと、中也は頭を抱えた。
That's all.