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【文豪ストレイドッグス】中原中也短編集

第5章 ゆるふわ


組織本部ビルの最上階で、首領は幼女を追い回す。自身が身に付ける派手なプリーツの裾と、手に持つ同じデザインのドレスを翻して、はエリスを追い詰めた。

「エリスちゃーん!此の新しいドレス、着てみない?私と同じデザインだよぉ…」

「可愛いドレスは嫌いじゃないけど!リンの必死さと、えっちなデザインは嫌!!」

怒った顔も可愛いよと云う、斜め後ろ180°の返事に、エリスは腰に手を当てて、から目を背けた。ぷいっと音が出そうな程の勢いで首を向けた先、執務室の扉の前に、紅葉が立っていることに気付き、エリスは目を見開く。

終わってからで構わないと、紅葉は素知らぬ振りを決め込むが、その隙にエリスは逃げて行ってしまった。は手に持ったドレスを、其の儘、紅葉に広げて見せる。

「紅葉くん、着てみる?」

「冗談も休み休み云わぬか。其の口縫い合わせてやるぞ」

「似合うと思うよ」

美人さんだからねと云いながら、紅葉の輪郭を、の指先が滑る。艶めいた仕草に、紅葉はぞくりと寒気を感じて、一歩引き下がった。女すら惑わすの色香に当てられて、紅葉の口からは先を急ぐように、要件が流れ出る。

「先の作戦で、中也が負傷した。太宰はどうにかならんのか」

中也の足を折ってやったと、昨夜太宰がはしゃいでいた姿が、頭に蘇った。どうなるものでもないと、は首を振り、仕方のない子たちだとため息を吐く。大したことはないだろうが、お見舞いでも行ってあげるからと、は紅葉を宥めすかした。
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