第5章 ゆるふわ
組織本部でも先ずお目にかかることのできない場所、首領の執務室で、は座って大窓から見える街を見下ろす。椅子の横に立ち、作戦の仔細を報告する部下を見遣り、視界に納めた。
努めて冷静に状況を報告する中也を、は肘掛に頬杖を付いたまま眺める。好戦的で短絡的ではあるものの、指示に従った行動は大変扱い易い。与えた部下の評判も善いようだと、中也の背後で黙って立っている管下の構成員を見た。
「もう善いよ。今夜の作戦は追って指示を出すから、其れまで少し休みなさい」
ひと段落した話題の境目で、は其の報告を切り上げる。僅かに揺れた中也の瞳に、薄く微笑んで見せると、彼は口を噤んだ。を見据える強い視線の中に潜む熱に、気付かない振りでもしようかと悪巧みしている間に、彼は部下を執務室から追い出してしまった。
「先に戻ッてろ」
そう云って、中也は部下たちが出て行った扉の閉まる時を待つ。ガチャリとドアノブが嵌る音を確認してから、中也は椅子の横ではなく、の目の前に立った。
「褒美は先に欲しい」
肘掛に置かれたの指先を取り、中也は手の甲に口付ける。触れた唇を、手首からゆっくりと這わせて、腕を伝い、首筋を舐めた。胸元の大きく開いた洋装の隙間に手を滑り込ませ、柔らかな膨らみを握る。