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【文豪ストレイドッグス】中原中也短編集

第4章 太宰のくるみ割り人形


Allegro Moderato

昇降機の中で寒さに震えくしゃみを繰り返すに、真っ黒な上着が降ってきた。申し訳なさに返そうとするも、罵り付きで着てろと命じられる。何故怒られるのか釈然としないものの、上着を羽織ったまま黙って付いて歩いた。

電子錠を開けて部屋に入る中也に、本当に付いて行って大丈夫だろうかと首を傾げていると、中也は片手での頰を挟み、凄む。

「手前が滞って、太宰の尻拭くのは、俺だ。分かったら早く入れ」

バスタオルと共に風呂場に投げ込まれて、は至れり尽くせりだと、身体を温めた。風呂上がりに着る服もなく、苦し紛れにバスタオルを巻き付けていると、携帯電話の着信音が響く。太宰だと慌てて風呂場を飛び出すと、の持ち込んだ資料を広げている中也のギョッとする様子を尻目に、荷物の中から携帯電話を取り出す。表示されている太宰治の文字に、矢張りと電話に出た。

「やあ、無事に着いたね。台風が過ぎるまで其処に居給えよ、世界一安全だろうから」

好き勝手に喋り倒す電話の向こうに唖然としていると、背後から携帯電話を掻っ攫われる。ここぞとばかりに中也は電話と怒鳴り合い、仕舞いには、窓から電話を投げ捨ててしまった。
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