第4章 太宰のくるみ割り人形
Allegretto
中也は男の頭を足蹴にしたまま、呆気に取られてぽっかりと口を開けるを振り返った。此れは何かと問いかければ、例の報告書の異能者だと、答えは返ってきたので、一応頭は働いているようだ。
異能者を部下に確保させ、待機していた車の連中ごと本部に返す。此の悪天候で仕事も滞るのであれば、いっそ連行ついでに本部で待機させた方が効率も良かろう。
一連の作業を怪訝な顔で見つめていたと、中也だけが取り残された玄関口で、中也は強風に飛ばされかかったを押さえつけ、反眼になって問い詰める。
「手前は何してやがる!」
折れた樹木や看板が飛び交い、屋根瓦が落ちて割れる音が響く中、突っ立っているだけの女の不自然な事この上ない。其の口から、太宰の指示でと滑り出てきた時には、瞬間的に血液が沸騰する程腹立たしかった。
「定刻に来たのは彼の男でしたが…」
怒りもせず、唯困った表情を浮かべるだけのに、中也は苛立ちを募らせる。仕事は選べ、危機感を持て、太宰の下で真面な仕事などある筈がないのだ。
中也はずぶ濡れのの腕を引っ掴み、玄関へと引きずり込んだ。