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【文豪ストレイドッグス】中原中也短編集

第4章 太宰のくるみ割り人形


Tempo di marcia viva

仕事の相棒だと云う人を連れて、執務室の主である太宰は姦しく戻ってきた。何時も通り、太宰は外套や持ち帰った荷物を投げるように渡してくる。合間に挟まる端的な指示に、承知しましたと返す言葉を最後まで聞きもせず、部屋主はヒラヒラと手を振って奥に引っ込んでしまったので、先ずは荷物を其の場に置いて、外套を片付けた。

は部屋の入り口で石像と化している中也に向き直ると、勝手気儘な主人に少し困った様に眉尻を下げて、苦笑する。

「お帰りなさい。はじめまして。です」

深々と腰を折ってから、事前に太宰から指示があった書類の山を、応接机に広げる。付箋に走り書きされた注意点が目立つ虫食いの報告書を、分かりやすいように並べた。

「指示があったものは、此方です。足りない資料があれば、ご用意しますので、お声がけください」

まるで怪異でも見るような目付きでの顔を見返してから適当に返事をして、中也は応接の椅子に座り込む。彼が紙束に集中した頃合いを見計らって熱めの茶を出すと、手元から目を離さずに湯飲みを手に取ったので、もう大丈夫かとは自分の机に立ち戻った。
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