第3章 夏祭【夏休み企画 心の重力番外編】
「受け取ってあげてくださいな」
の言葉に、中也は手を伸ばした。途端に顔を綻ばせる姉妹に目を細める。くるくると良く動く表情だ。
来た時のように、裏手の階段を駆け下りる姉妹を見送って、は中也の元に舞い戻る。姉妹から貰ったりんご飴を互いにひとつずつ持って顔を見合わせた。
「子どもは、よく見ていますね」
ひとつ微笑みを零してから、はりんご飴を齧る。一寸した衝撃で置いてけぼりになった心を搔き集めるように、中也はの耳に鎮座する柘榴石の耳飾りに触れてから、彼女を引き寄せて口付けた。舌で唇をこじ開けて、先刻が含んだりんご飴の欠片を全て掻っ攫う。驚いて疎かになるの手元を、飴が刺さった棒ごと捕まえて、中也は欠片を飲み込んだ。
「餓鬼が好きなんだな」
甘いりんご味の接吻の合間に尋ねてみると、は蕩けるような目で小さく頷く。其の瞳の熱に引き摺り込まれるように、口付けを繰り返した。次第に激しく成ってゆく其れに、息が上がる。
「餓鬼ぐらい、いくらでも作ってやるから、早く産めよ」
夏祭の一角、夜の帳が下りて、風車と風鈴が夜風に吹かれていた。
That's all.