第2章 その日の記憶
ふと目が覚めた。
背中の下には硬い床の感触がして、床に寝かされていたのだと気づく。
無意識にお母さん、と呼びそうになって記憶の最後が蘇る。
そして急にポシェットの存在を思い出した。
あのポシェットには、母と父に渡すつもりだった花束が入っていた。
辺りを探るけれど、やはりというべきか何も無かった。
「あ、起きてる」
薄暗い部屋の中、こちらへ向かう人影があった。
周りには誰もおらず、ティアナに用があるらしかった。
「まず、あなたの名前は?」
訪ねてきたのは女性兵士だった。
忙しいはずで、こんな子供相手なのに丁寧でいい人そうだ。
「ティアナ・ローエです...」
「家族はいるかな?」
「……っ」
あの光景がフラッシュバックして一瞬呼吸が止まった。
女性兵士はそんなティアナの背中を優しくさする。
「ごめんね、辛いと思うけど必要なんだ」
「……母は巨人に殺されました。父は分かりません。ですが市街地に居たので恐らく同じたと思います」
「そうか。それで歳はいくつ?」
「14です」
つい先日誕生日を迎えたばかりだった。
あの日は幸せだった。こんなことになるなんて、一ミリだって想像していなかった。
「あの、今何時ですか。ちょっと記憶飛んでいて」
「無理もない。襲撃から一日たった。今は夜だよ」
それから昨日起こったことを説明してくれた。
昼過ぎに謎の大型巨人と鎧のような巨人がシガンシナ区の壁と内門を破壊して、ウォールマリア内に巨人が侵入してしまった。
駐屯兵に連れられたティアナは鎧が内門を破る前に避難できたらしい。そしてついた時には既に気絶してたから、船酔いの可能性もあるから安静にして、といわれた。