第8章 訓練に訓練、そしてちょっとの甘さ
どうしようかとティアナが迷っていると、ナナバに呼ばれた。
「そこの二人。ちょっと来てくれないかな」
近寄ると、少し声を潜めて話し出す。
「二人とも新兵だから注意してほしいんだけど。壁外調査の前は
自暴自棄になる男がいてね。女性兵士を狙った強姦が発生することが
あるから、十分に気を付けてくれ」
「はい、ご忠告ありがとうございます」
「え~怖いなぁ」
「だから一人で行動しないとかで対策してね」
基本誰にでも分け隔てなく優しくかっこいいナナバも、
この新兵の態度に呆れているようだった。
「そういえばティアナ、たくさん掃除してくれてありがとね」
「いえいえ、自分ができることをやるだけですから」
「そうはいっても、気性の荒い馬もいただろう」
さっきの会話を聞いてそれとなくくぎを刺してくれるナナバ。
ティアナはありがたく思うと同時に、こんな人になりたいと
憧れの想いを強くした。
「みんないい子にしてくれて。話したら分かってくれたんですよ。
お利口ですよね」
「利口だとは思うが…言って聞くのはティアナだからじゃないかな」
「そうですかね?」
会話を弾ませれば、いつの間にかあの新兵はいなくなっていた。