第8章 訓練に訓練、そしてちょっとの甘さ
今日は馬当番の日だった。
馬術の訓練とは別に、2つの班で一日世話をする。
ティアナは2回目だったが、この仕事は好きだった。
全身使うので鍛えていても重労働なため敬遠されがちだが、
色んな馬と触れ合えるからティアナはむしろ癒されているのだ。
「じゃあまず馬房の掃除から始めて」
指示が出された直後誰より早く厩舎に入って掃除を始める。
ティアナはもとより動物から好かれる体質であるため、馬たちが
気をきかせておとなしくしていたりする。
人より早く多くティアナはこなし、午前中が終わる。
なにせ五百頭は軽く超える数なのだ。
タオルで汗を拭い、全体で食堂に向かう。
その途中、もう一つの班の新兵の一人が話しかけてくる。
女で、名は何と言っただろうか。
ティアナは話したことがなく、印象も薄い。
「ティアナさーん、疲れましたね~」
「…そうですね」
「でもいいなー、ティアナさんが掃除したところみんな大人しい馬
ばっかでしたね~」
「…そうですね、みんな大人しく待っていてくれました」
「なんかずるくないですか~?」
何をわざわざ言いに来たと思えば、嫌味か。
ティアナは溜息をつかないようにするので精一杯だった。