第2章 その日の記憶
何が何だか分からないまま、とにかく家へと急いで向かう。
ティアナが住む小さな集落に着いてみれば、大きな石が飛ばされて来ていて、そして地面が血だらけなことに気づいた。
「ひっ……!」
ある岩のすぐ近くには靴だけが放り出されていて、誰かが岩の下敷きになっていることが察せられた。
市街地から遠くない集落とはいえ、小さなところだ。岩の下の人物はきっと、ティアナの知り合いだろう。
ティアナは悲鳴を飲み込むと、一瞬止めた足を動かす。
何が起きっているのかなんて後回しだ。
とにかく母の無事を確認しなければ。
そして、ようやくたどり着いた家。
…大きな岩の塊が、家を押しつぶしていた。
「お母さん!!」
「ティアナ……?」
「……っ!」
声がしたほうは、かつて台所があったところだ。
急いでそちらへ回ると、材木につぶされた母がいた。
「今助けるから!!」
「ティアナ、よく聞いて。仮にお母さんがここから出られても、この状態じゃ走れない」
「だから何!?私が背負えばいいじゃない」
話しながらも手は休めない。
「無理よ。ティアナ、よく聞きなさい。シガンシナの門が破壊されたの。その内外の巨人がここにもやってくる!村の動ける人達はもう行ったわ。ティアナも内門を目指して早く逃げて!!」
「嫌!!私はお母さんと一緒に行く!」
「あなたは賢いから、分かるでしょ。……お願いだから、早く逃げて」
母が懇願するように言った直後、ドシン、ドシンと地面が揺れた。
ついに巨人がここまで来たのだ。
不気味な顔をして、にまぁっと笑ってる。
「ティアナ、お願い行って!!早く!」
「嫌!!お母さん早く出て!」
「ティアナ!!」
もうすぐそこまで巨人が来ていた。
時間が、無かった。