第2章 その日の記憶
「うわぁぁ!きれい……!」
惚れ惚れするほど美しい花畑であった。
見渡す限り埋め尽くされた花々。
森に自生する花たちが光を求め、開けたところに生えて出来た偶然の産物だ。
景色に見惚れているティアナを見て、一番初めに引っ張ったあの小さいリスが誇らしげに鳴いた。
おそらくこの場所を見つけたのはこの子だったのだろう。
「私に見せてくれてありがと」
それに気づいたティアナは、そのリスに向かってはにかむように笑った。
そしてティアナは花畑に向かって勢いよく駆ける。
花畑に降り注ぐ太陽の光が、走って揺れるミルクティー色の腰まである長い髪に反射して輝く。
咲き乱れた花の中で思いっきり息を吸い込むと、いろんな花の香りでいっぱいになった。
様々な種類なのに混ざった香りが強すぎたりして不快になるようなことはなく、不思議といい香りだった。
それはこの場所の爽やかさと可憐さと美しさとを香りでも体現しているかのよう。
満足したティアナは母たちに花を少し持って帰ろうとその場にしゃがむ。
「どれもきれいで迷っちゃうな」
しばらく花を集めていたティアナだったが、やがて花の中から立ち上がった。
肩に提げていたポシェットに紐でまとめた花束を大切にしまうと、動物たちを呼んだ。
ティアナが集めていた間思い思いに遊んでいた動物たちが集まり、帰るために歩き出した、
――その時だった。