第4章 卒業、そして入団
一時間ほど経ち、紅茶の2杯目が終わるころにエルヴィンは
時間を確認した。
「すまない、長話をさせてしまったな」
「…いえ、充実した時間でした」
「そういってもらえるとありがたい。そろそろ歓迎会の時間だが、
ティアナ一人で帰れるかい?」
ティアナをからかうような口調で言った。
エルヴィンの言葉にほんの少しティアナは顔を赤くする。
「…帰れます」
「そうか。だがまだ見ていないところもあっただろう?
今度誰かに案内させるよ」
「…お気遣いありがとうございます。ですがそれには
及びませんので」
正直言えば、この辺りはティアナがまだ見ていないために
この団長室以外は知らなかったのだが。
入りたての新兵がそこまでしてもらう義理はないと、遠慮した。
「じゃあ部屋に戻って休んでくれ。時間には遅れないように」
「…了解です」
―パタン。
扉が閉まり、エルヴィンはカップを片付ける。
そして考えるのはティアナのことだ。
急に訪ねてきたと思ったら、現れたのは淡いミルクティー色の
髪と大きなブラウンの瞳が印象的な、小柄で可憐な少女だった。
ここを訪れた理由を聞き、少し興味をもって話をしてみたが、
喜怒哀楽が表に出ない性格に見えた。出せないのか、出さないのかは
不明だが。
だが最後にエルヴィンが少しからかった時、ティアナは
微かに頬を染めた。その姿が忘れられなくて、もう一度
見たい…なんて思った自分に苦笑する。
片付け終わって執務に戻りながら、エルヴィンは
面白くなりそうだ…と考えた。