第3章 孤高の天才
合図の笛が鳴り、相手が変わる。
今度も大きい人で、だけど女性だった。
黙々と取り組む二人。
ティアナも奮戦しているが、やはり劣勢なのは明らかだ。
しかし今度は力の差ではなく、単純に技術の差のようだった。
「…はっ」
短い気合と共にティアナは軽く宙に舞った。
そして次の瞬間感じる地面の感触。
ティアナは何が起こったのかわからず、少し放心していた。
そんなティアナを見下ろしてる相手。
目が合ってティアナは我に返った。
「…あの」
「なに?」
起き上がりながら話しかける。
ティアナはこの人に教えてもらおうと決意したのだ。
「…もしよろしければ私にその技、教えていただけませんか?」
相手はいぶかしむように目を細め、ティアナを見た。
何せ、ティアナが誰かに話しかけたのは
これが初めてだったからだ。
ティアナは誰ともつるまず、相変わらず一人で
行動していた。
別にそれは苦でもなく、羨ましいとも思っていなかった。
「いいよ、教えてあげる。ただし私は厳しいからね」
ティアナがじっと見つめていれば、ついに折れてくれた。
「そうだ、私はキャシー。よろしく」
「…ティアナです。よろしくお願いします」
こうしてティアナはキャシーに格闘術を教わった。
後日、やがて苦手だった対人格闘も得意になり、
ティアナはキャシーに改めて礼を言いたがったが、
ついにこの後会うことはなかった。