第12章 初陣・2
―翌朝。
調査兵団一行は壁外拠点を発った。
帰りも長距離索敵陣形を展開し、巨人との遭遇に備える。
ティアナもいつもよりは少ないが、しっかり睡眠をとれたおかげで
体調は万全だ。
今のところ珍しく損害らしい損害が出ていない状態に、兵士の士気は
高いが若干注意力散漫になっているのも中にはいた。
それは主に新兵で、予想以上に順調な初壁外遠征に気が大きくなって
いるのだろうと思われた。
各班のベテラン兵がそれぞれ注意していたが、どうもティアナは
それが嵐の前の静けさのような気がして―
――嫌な予感がする。
それは漠然としたものだったが、どこか確信めいてさえいた。
突如、各所から赤や黒の信煙弾が打ち上げられる。
陣形のあらゆる方面から見えるその印は、大方包囲されたと
いっても過言ではないほどだ。
こうなってしまえば巨人を避けるのに有効なこの陣形も意味を
なさなくなる。
証拠に、エルヴィンからの新たな緑の信煙弾は打たれていない。
幸いと言っていいのか、ティアナの周りには巨人の姿は見えない。
だがいつ遭遇するか分からないため、周囲を警戒しながら一応
ティアナも信煙弾を打つ。
「…お願い…」
ティアナは自分が誰に何を祈っているのかさえ分からないまま、
ほとんど無意識に呟いていた。