第12章 初陣・2
―なのに。
「そのことならリヴァイから聞いているよ」
予想外のエルヴィンの言葉にティアナは何も言えない。
だって、それはつまり。
「―その上で私を壁外調査に参加させたのですか?」
兵士として使えない欠点があるのを容認しているということなの
だから。
そんなの、博打でしかない。自分が当の本人であることも一瞬忘れ、
ティアナはエルヴィンに非難の眼差しを向けた。
「確かに、特殊な体質の君を参加させるのは危険だ」
エルヴィンは真剣な声と顔で言った。
その危険を分かっていても、なぜ。
「―だが、それ以上に君を失うのは非常に惜しい。
ティアナ、君はやがて調査兵団の大きな力となるだろう」
「…私はそんな期待をしてもらえるほの実力ではないです」
エルヴィンからのおおそれた期待にティアナは委縮する。
そもそも、仮に実力はあったとしてもリヴァイのようにただ力になる
だけじゃなく、それ以上の損害を出す危険があるティアナは
調査兵団の大きな力になんてなれるはずがない。
「…案外そう思っているのは君だけかもしれない。それに、
私は博打くらいしか能がないものでね」
「そんなことないです…!団長はいつも兵団のこと、兵士のことを
よく考えてくださっていますし、博打じゃない功績だって数多く
あるじゃないですか!」
ほんの少しだけ自嘲気味に言ったエルヴィンに、ティアナは
思わず勢い良く返してしまった。
でもそれは決してお世辞のようなものではなくて、紛れもなく
ティアナの本心だ。
そんなティアナにエルヴィンは意外そうな表情を浮かべると、
ありがとう、と呟いた。