第10章 まったり休日
アンナが、まさか以前聞いたベルの恋人だった人の姉だとは思いも
しなかったけれど、その恋人の方は亡くなったと聞いていたから
二人とも元気そうで何よりだ。
「そうだ、アンナさん。ティアナに服を見立ててもらっていい?
代金は私が払う。この子ったらこんなかわいいのにろくに服を
持ってなくて」
「あら、そうなの?でもそうね、お金は最低限でいいわ。
私が腕によりをかけて仕立てようかな」
「いや、今あるのでも…」
「そんなわけにはいかないわ。ベルも美人だけど、ティアナちゃんは
また違った美しさがあるというか...
もう創作意欲を掻き立てられるのよね!」
「まぁアンナさんが作りたいならいいと思うけど...」
「あ、あの…!」
ティアナをよそにポンポン進んでいく話について行けず、思わず
声を上げる。
「どうしたの?」
「別に服には困ってないし、わざわざ仕立てていただくなんて
申し訳ないですし、お金だって服を買うのなら私が自分で
出しますし…」
「…ティアナ、今日兵服で来ようとしたのは誰だっけ?」
「う...それは…」
ベルの指摘に言葉が詰まる。
ひとつ言い訳をするとしたら、ティアナはずっと訓練一筋だった
からシャツくらいしか要らなかったのだ。