第5章 おとぎのくにの 3
怒るんじゃなくて、ちゃんとカズに伝えよう。
理解してもらえるよう言葉を惜しまずに。
深呼吸して気持ちを落ち着けて。
「怒鳴ってごめん。ちゃんと思ってること話すから聞いてくれる?」
「…はい」
まっすぐカズを見つめたら、カズも姿勢を正して向き合ってくれた。
「俺は誕生日にカズがハンカチをくれたのが嬉しかったんだ。本当に嬉しくて、あれから毎日身につけてる。もちろん今も…」
ポケットに忍ばせていたハンカチをそっと取り出すと、カズは目を大きく見開いた。
本気で驚いているようだ。
こんなこと告白するのは少し恥ずかしいけど、実際に見せるのが一番伝わる気がした。
「見る度にもらった時のことを思い出して幸せな気持ちになるんだ。だからカズにも見るだけで今日の楽しかった気持ちを思い出せる何か目に見える物を贈りたくなったんだ」
「ジュンさま…」
カズの瞳から怯えの色が消えて、代わりに恥ずかしそうで、でもどこか嬉しそうなそんな表情に変わっていく。
ちゃんと伝わってるのが分かって嬉しくなる。
「でも、カズが本当にいらないなら…プレゼントなんて迷惑だって言うなら買わない。カズが喜ばないなら意味がないから。でも遠慮してるだけなら、そんな遠慮は捨てて欲しい。俺はカズにプレゼントしたいと思ってる」
カズを見つめたまま伝えたいことは全部伝えた。