第5章 おとぎのくにの 3
「カズさま、ジュンさまは今日の思い出として形に残るものをカズさまに贈りたいんですよ」
「形に残るもの…ですか?」
「そうです」
トウマが優しく言い聞かせるように話し掛けると、カズは首を傾げた。
さっきも思ったけど、どうしてトウマには俺の考えていることが分かってしまうんだろう…
カズに物欲がないのは知っている。
だから誕生日プレゼントもこうやって物ではない体験にしたんだ。
でも俺はカズにハンカチをもらったことがすごく嬉しくて。
お守りみたいに毎日持ち歩いているくらい嬉しくて。
見る度にもらった時の感動を思い出す。
俺にはカズみたいに世界に1つの贈り物を自分の手で作ることは出来ないけれど。
見る度に今日の経験を思い出すような何かを贈りたいと思ったんだ。
でもどんなに心で思っていたって、言葉にしなければカズには分かるわけない。
勝手に傷ついて怒って、そんなのカズからしたら意味も分からないし理不尽でしかないよな。
今日は何度もトウマに助けられてる。
俺の言葉が足りないところをトウマが補足してくれてるんだ。
出発前はトウマなんて居なくていいと思ってたけど、本当にカズと2人きりだったら、もっと早い段階でギスギスしてこんなに楽しめなかったに違いない。
トウマに感謝しないとだな。