第16章 おとぎのくにの 8
「このままで大丈夫よ」
「申し訳ありません…」
「本当に気にしないでいいから」
私にしがみつくユーリの肩にそっと手を添えるとユーリが嬉しそうに笑って。
それを見た院長は本当に大丈夫なのだと分かってくれたのか、やっと笑顔を見せてくれた。
それから院長と改めて挨拶を交わして。
一通りのやり取りが終わると、おとなしく待っていた子どもたちにわっと取り囲まれた。
「サトさま!」
「カズちゃん!」
「ようこそ!」
「来てくれてありがとう!」
みんな満面の笑みを浮かべていて、私たちを歓迎してくれているのが伝わってくる。
ちらりと隣を見ると、カズも肩の力が抜けたのか柔らかい微笑を浮かべていた。
「さとさま!かずちゃん!こっち!あんないするね!」
ユーリに手を引かれ、ほかの子たちに取り囲まれた状態のまま、誘導されて建物の中に入る。
お義姉さまは毎回孤児院内をご自分の目で見て回っていたと聞いている。
だから子どもたちは当然のように私たちのことも案内しようとしてくれているのだろう。
院長もにこにこしながら後ろをついてくる。
建物は木造で古いように見えたけれど、室内は掃除が行き届いていてとても綺麗だった。
「ここはいんちょうせんせいのへや」
「ここはしょくどう」
「ここはごらくしつ」
ユーリが一部屋ずつそこが何の部屋なのか教えてくれて、それに年長の子たちがもう少し詳しい説明を足してくれる。
私にとっては見るもの全てが新鮮で、興味深く子どもたちの話に耳を傾けた。