第5章 おとぎのくにの 3
カズはしばらく黙り込んでいたけれど、やがて意を決したように口を開いた。
「あの、ハンカチ…ありがとうございます。ジュンさまが持ち歩いてくださっているなんて夢みたいです…」
頬をピンクに染めながら頭を下げると、恥ずかしそうにはにかんだ。
その顔がとても可愛くて。
本当に嬉しそうで。
恥ずかしくてもちゃんと見せて良かったと思った。
「ジュンさまからの贈り物が迷惑なはずありません…そんな風に思っていただけてとても嬉しいですし…」
カズは何度も言い淀みながら、それでも一生懸命言葉を紡いでくれて。
「私もほしいです…目に見えるジュンさまとの思い出の品が…」
そこまで言うと真っ赤になって俯いてしまった。
握り締めたカズの手は震えていて、かなりの勇気を出してくれたんだと分かる。
「ありがとう、カズ」
「そんな!お礼を申し上げるのは私の方です!」
「ううん、勇気を出してくれて…カズには言いにくいだろうこともちゃんと言葉にしてくれて…ありがとう。嬉しかった」
「ジュンさま…」
カズが頑張って本心を伝えてくれたことがとても嬉しかった。
最初からこうやって話せばよかったんだ。
カズのことを考えて言葉にすればちゃんと伝わるし、カズだってちゃんと応えてくれるんだ。