第5章 おとぎのくにの 3
「俺はカズを彼女と間違われて嬉しいんだ!だから否定はしたくないし、しない!」
「は……?え……?」
もっとストレートに伝えてみても、カズはまだ分からないようで。
トウマが大爆笑してるのが腹立つ。
「もういい!何も気にするな!」
「…はい」
理解してもらうことは諦めて強引にこの話は終わらせた。
気を取り直して、本題に戻ろう。
「さぁ、カズ!好きなのを選んで!」
「えっ…そんな…私は何も要らないです…」
やっぱり本人に選んでもらうのがいいと思って、並んだ装飾品たちを指さすと、カズはブンブンと両手を振った。
その態度にまた苛立ってしまう。
「なんでだよ?」
「…今日、街へ連れて来ていただいただけでも私には過分なお祝いですのに…これ以上は…」
店主の前だから言えないけど、こんなのオモチャみたいなものだし。
値段のことを言うなら、さっき買った乾燥貝柱のが高いくらいで。
遠慮されるような高価なものじゃない。
それでも頑なに拒否するのは、俺からのプレゼントなんて迷惑だってこと…?
カズがそう言ったわけじゃないのに、一度浮かんだ考えは消えなくて。
悲しくて心が荒んでしまって。
「俺がカズにプレゼントしたいんだ!カズは黙って受け取ればいい!」
「ジュンさま、言い方!」
再び怒鳴った俺を、トウマが咎めた。
「そんな言い方をされたら、カズさまに何も伝わりませんよ?」
そんなこと分かってる。
怒鳴ったって怯えさせるだけで何も伝わらないって。
今だって泣きそうな顔で震えてる。