第5章 おとぎのくにの 3
「それなら…あの、でも本当に無理でしたら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
トウマの情けない顔を見て可哀想に思ったのか、やっとカズが手を引っ込めた。
「帰りに受け取るお菓子はカズさまに持っていただきたいと思ってますから。よろしくお願いします」
「はい」
カズがこれ以上気にしないようにかトウマが言い足すと、カズはにっこり笑って頷いた。
本当はカズに荷物を持たせるなんてしたくないけど。
あの菓子の箱は軽いし、それでカズが納得するならいいか。
トウマが心底ホッとしたように大きく安堵の息を吐くから、また少し笑った。
まだ見ていない店も残り少なくなってきた。
どんなにカズが可愛い反応をしても、もう何も買わないぞと自分に言い聞かせていたけれど。
一軒の店でその決意は脆くも崩れてしまった。
女の子向けの装飾品を扱うその露店には、可愛らしいデザインの髪飾りやらブローチやらが所狭しと並んでいて。
若い子向けみたいで値段も可愛らしい。
もちろん質も値段相応で、普段俺たちが身に付けているものとは雲泥の差だ。
使っている石も、宝石ではなくガラス玉だろう。
それでも、陽の光を反射してキラキラと輝いているのがとても綺麗で。
宝石にもアクセサリーにも興味がないと言っていたカズも、ガラス玉に負けないくらい瞳をキラキラさせて見ていて。
「坊ちゃん、可愛らしい彼女に1つプレゼントなんてどうだい?」
気付いたら、店の親父に勧められるまま真剣に選び始めてしまっていた。