第5章 おとぎのくにの 3
カズは意外と頑固で。
にこやかなのに全然引こうとしない。
「分かった!もうこれ以上は荷物を増やさないから!」
冷静になって見ると、確かに多い。
この量はサトとカズの2人では食べきれないだろう。
まぁ、屋敷の皆で分けてもらえばいいだけなんだけど。
「そんな…ジュンさまはご自由になさってください」
「いや、いいんだ。確かにトウマの言う通り少し買いすぎだったかもしれない」
この土産は全部カズのために買ったものだけど、カズが恐縮してしまうと思ってそれは黙っている。
この様子だと本当のことを知ったら、荷物を全部自分が持つとか言い出しかねないし。
屋敷に戻るまで内緒にしておくつもりだ。
「ジュンさまもこう仰ってますし!この量なら私1人で持てますから!」
「…本当ですか?」
「本当です!そのお気持ちだけで十分です!」
カズは疑いの目を向けるがトウマも必死だ。
「お願いですから、その手を下げてください。もし女性に荷物を持たせたなんて団長に知られたら、俺はボコボコにされてしまいますよ…」
「え?」
「私以外にもそこかしこに護衛の者がいるので、ここでの私の行動は団長にも筒抜けなんです…」
トウマが本当に情けない顔をするからつい笑ってしまう。
「カズ、トウマの面子のためにも引いてやってよ」
「ジュンさま…でも…」
「本当にトウマがボコボコになるぞ?まぁ、それはそれで面白いからいいけど」
「笑いごとじゃありませんよ!」
騎士団長はものすごく真面目な男で。
顔は怖いが女子どもには優しい。
そして団員にはめちゃくちゃ厳しい。
まぁトウマの言うことは大袈裟だけど、本当に俺やカズが大荷物を抱えていたら確実に説教はくらうだろう。