第5章 おとぎのくにの 3
しっかり休んでから、残りを見るためにまた市場をまわり始めた。
人混みに入る前にもう一度カズの手を捕まえたけど、カズは少し照れたようにはにかむだけでもう嫌がることはなかった。
それだけで俺は幸せな気持ちになる。
今度もカズに引っ張られるように次々に店を覗いて。
可愛いカズの笑顔に比例するように土産も増えていく。
「ジュンさま、さすがに買いすぎですよ!もう持てませんからね!」
乾物を扱う店で乾燥させた小魚や貝柱を買ったところで、トウマが悲鳴を上げた。
今買ったのは出汁をとるためのものらしいんだけど、これを使ったスープをカズが美味しそうに飲んでたんだよ。
あんな可愛い顔で美味しいってにっこり言われたらそりゃ買っちゃうよね。
買った荷物は全てトウマが持ってくれてるけど、見れば確かに両手いっぱいになっていて。
あんなに買ったっけ?
果物から始まって、大半は食べ物だと思うけど…
でも俺は自分で持つと言ったのに、そういう訳にはいかないと言ってもぎ取っていったのはトウマだ。
「なんだこれくらいで情けない。王宮騎士団の名が泣くぞ?」
「下手な鍛錬よりよっぽどキツイですよ、この重さ」
「今日はこのために来たんだろ?仕事をしろ」
「俺の仕事は護衛ですよ!ご・え・い!荷物持ちじゃないんです!」
とりあえず呆れた顔を作ってみたら、トウマはわざとらしく嘆き出した。