第5章 おとぎのくにの 3
落ち着いてもぐもぐと食べ始めたカズを眺めながら、そう言えばずっと歩きっぱなしで休憩を取っていなかったことに気付く。
意識したら少し足が疲れている気がした。
俺でも疲れを感じているんだから、カズはもっと疲れているだろう。
今日の俺は本当にダメだな。
カズとの外出が嬉しくて楽しくて。
浮かれてしまっていて、全然気が回らない。
もっとカズのことを考えてあげなきゃ。
カズのこと大切にしたいと思っているんだから。
トウマに飲み物を買ってきてもらって、カズが食べ終わった後もゆっくり休む。
「これも美味いな」
「はい、とても」
絞りたての果物ジュースは、素材の味だけなはずなのにすごく美味しい。
市場だから新鮮なのもあるだろうし、たくさん歩いて疲れているのもより美味しく感じさせているのかもしれない。
そんなことをまったり喋っていたら
「外で…というのも美味しく感じる理由の1つかもしれませんね」
しみじみと呟いたカズが微笑みながらもふっと一瞬遠い目をした。
今カズは何を考えてる?
外出が許されないサトのこと?
「じゃあさ、今度サトの秘密の場所でみんなでご飯食べようか」
「えっ?」
カズを笑顔にしたいと思ったら、そんな言葉が口をついて出た。
カズは突然の話に目を丸くして驚いていたけど、俺はとっさの思いつきにしてはなかなか良い考えだと思って。
「サトとショウ兄さんと4人で。サンドイッチとか簡単に摘めるものを用意してさ、敷物敷いて。庭でだって、きっと外で食べたら美味しいよ」
思いつくままに口にしていくと、カズの顔もどんどん明るくなっていく。
「素敵ですね!サトさまも喜ばれると思います!」
「じゃあ帰ったら2人にも話して具体的に計画を立てよう」
「はい!」
どんなメニューにしたら外でも食べやすいか真剣に考え始めたカズはイキイキしていて楽しそうで。
カズが嬉しそうだと俺も嬉しかった。