第5章 おとぎのくにの 3
「美味しい…」
「そうだろ!」
一口食べたカズが目をキラキラさせて呟くから嬉しくなる。
「なんでジュンさまが得意げなんですか」
「いいだろ、別に!」
トウマが笑いながらチャチャを入れてくるのには少しムッとしたけど。
「でもやっぱりドキドキします…」
カズが緊張した顔で胸を押さえてるのが可愛くて。
すぐにトウマなんてどうでも良くなる。
「ふふ、誰にも怒られないからさ。今は楽しんじゃおうよ」
「はい」
ふわっと笑って頷いたカズはやっぱりめちゃくちゃ可愛かった。
…とは言ったものの。
歩きながら食べる、ということがカズには難しいみたいで。
俺もトウマもあっという間に食べ終わったのに、カズのラップサンドは一向に減らない。
ポロポロこぼしてしまったり、すぐに足が止まってしまったりしていて、食べることにも歩くことにも苦戦しているのを見かねて。
結局空いていたベンチに座ることにした。
「すみません…」
カズは申し訳なさそうに謝るけど、どこかホッとしたようにも見えて。
カズに楽しんでほしくて。
色々な経験を共有したくて。
ついあれもこれもと押し付けてしまうけど、ちゃんとカズの様子を見ながらにしないといけないな…と、また反省した。