第1章 おとぎのくにの
最近カズと読んだ物語の王子さまがそのまま抜け出てきたみたい。
王子たちは、2人とも驚くほど整った顔をしている。
白い肌に大きな瞳、キリッとした眉に赤い唇。
兄弟で顔立ちはあまり似ていないけれど、2人ともとても綺麗だった。
無意識のうちにジロジロと見つめてしまっていたらしい。
視線に気が付いた上の王子と目が合ってしまった。
自分の不躾な態度が恥ずかしくなるが、王子は嫌な顔一つせずに、にこりと微笑んだ。
その笑顔を見た瞬間、頬が熱くなるのを感じた。
同時に心臓がドキドキとうるさく鳴り始める。
何これっ!?
今までこんな風になったことなんてないから、自分の体の状態に不安になる。
思わず胸の前できゅっと拳を握りしめたら
「サトさま?」
私の後ろに隠れるように立っていたカズが心配そうな声で小さく呼び掛けてきた。
いけない!私がしっかりしないとカズまで不安になってしまう。
カズの存在を思い出したら、気持ちがシャンとした。
小さく深呼吸をして背筋を正してから、王子に向かって私も笑顔を作った。
そんな私たちの様子に気付いたのか
「紹介がまだだったわね。こちらが第6王子のショウ、こちらが第7王子のジュンよ」
王妃さまが王子たちを紹介してくださった。
「ショウです。本日はお招きくださりありがとうございます」
「ジュンです。よろしくお願いします」
それぞれ自分でも名乗ると深く頭を下げる。
優雅な仕草はさすが王子さまだ。
「はじめまして、サトと申します」
私もドレスの裾をつまみ腰を落として頭を下げる。
「ふふ、従兄弟同士なんだから、ここでは畏まるのはやめましょう?」
「そうよ。仲良くしてちょうだい」
私たちのやり取りを見守っていたお母さまたちは楽しそうに笑った。