第1章 おとぎのくにの
自己紹介が終わると、お茶会の会場であるサロンへ移動した。
庭に面したサロンからは、綺麗に咲き誇る花々がよく見える。
それぞれ席に着いたが、カズは座らずに私の後ろに控えるように立った。
そんなカズをジュンさまが不思議そうに見る。
「どうして座らないのですか?」
「まだお名前も伺ってません。サトさまの妹君···ではないですよね?」
ショウさまもじっとカズを見つめる。
私に妹がいないことはご存知らしい。
注目を集めてしまったカズが困ったように私を見るから、にっこりと頷いてやった。
それで腹を括ったのか
「侍女のカズと申します。私のような身分のものがこの場に立つご無礼をお許しください」
カズはとても侍女には見えない優雅な仕草で頭を下げた。
「侍女なの?お姫さまみたいに綺麗なのに?」
まっすぐカズを見つめていたジュンさまが驚いた顔で呟くと、カズは真っ赤になった。
大切なカズを褒めてもらえて私が嬉しくなる。
「カズは私の侍女ですが、本当の妹みたいに思っているんです」
「そうよ。私だって実の娘みたいに思っているのだから、自分のことをそんな風に言わないで」
「サトさま···奥さま···」
カズが目を潤ませる。
「さぁ、カズちゃんも座って!私は可愛いサトちゃんとカズちゃんに会いに来たのよ。カズちゃんともお茶を飲みたいの」
王妃さまにそう言われてしまったらカズには断れない。
私の隣の席に控えめにそっと腰掛けた。