第5章 おとぎのくにの 3
「わぁ……っ…」
広場に着くと、カズは足を止めて感嘆の声を上げた。
目の前には所狭しと何十軒もの露店が軒を並べている。
揃いの白い帆布の屋根が青空に映えてすごく綺麗だ。
広場は街中以上の人で賑わっていて、あちらこちらから客を呼ぶ威勢の良い声が響いている。
この活気に溢れる空気が俺は好きだった。
でもこの独特な空間をカズがどう感じるかは分からない。
市場を見つめるカズは言葉もなく呆然としているように見えるから少し不安になる。
「カズ、怖い?」
「いえ…怖くはないです…」
聞いてみればすぐ否定してくれるけど、また強張ってしまった顔を見ると俺に気を遣って強がっているんじゃないかと心配になる。
「本当に?」
「あの…本当は少し怖いですけど…でもジュンさまと一緒なので…大丈夫です…」
もう一度確認すると、カズは耳まで真っ赤になりながらポソポソとそんな可愛いことを言ってくれた。
思いがけない言葉に俺の顔まで赤くなるのが分かる。
カズが俺のことを頼りにしてくれてる。
それが嬉しくて何だか少しくすぐったくて。
「絶対にこの手を離さないから。安心してろ」
恥ずかしくてちょっとぶっきらぼうな口調になってしまったけど。
繋いだ手に力を込めたら、カズは赤い顔でこくりと頷いた。