第5章 おとぎのくにの 3
「サトさまは甘いものがお好きですし、こんな繊細で可愛いお菓子は見たことがないので…」
こんな時でもカズは自分よりサトのことを考えているんだな。
俺もカズを説得してくれたお礼にサトに何かしたかったし、カズが選んだものなら間違いないだろう。
「すごくいいと思うよ。サト、きっと喜ぶな。よし、お土産に買って行こう」
「はい」
カズが嬉しそうに笑ってくれて、俺も嬉しくなった。
すぐに店内に入って、店員に声を掛けて。
「カズ、選んで?」
「はい」
カズが悩みながら選んだものを箱に詰めてもらう。
リボンのかかった可愛らしい箱を受け取ったカズは何だか少し感動したような顔をしていた。
こんな表情もあまり見たことがない。
「初めての買い物はどうだった?」
「とても緊張しましたけど楽しかったです」
「それなら良かった」
その顔を見れば答えなんて聞かなくても分かったけど、それでも言葉にしてもらえると安心する。
今日はカズにとって初めてのことがまだまだ待ってる。
カズのたくさんの初めてに立ち会えることが嬉しかった。
この砂糖菓子は繊細で崩れやすいと言うので、店に預けて帰りに受け取ることにした。
店を出れば、広場はもうすぐそこだ。