第5章 おとぎのくにの 3
「ジュンさまがそうしたくてしてることなんですから、不敬だなんて思わなくていいんですよ。ここにはお二人の身分を知ってる者はいませんし、カズさまも本当にお嫌ではないでしょう?」
トウマはカズの心も読めるのか?
じわじわとカズの顔が赤くなっていく。
トウマの言う通りなんだろうか?
カズは身分を気にしているだけで、俺と手を繋ぐのが嫌じゃないというのは本心だと思っていいのかな。
トゲトゲしていた気持ちが丸くなっていくのを感じる。
「カズ、トウマの言う通りだから…もし嫌じゃないなら、手を繋いでてよ。そうしたら俺が安心だから」
なるべく優しい口調になるように意識する。
カズは赤い顔のまま考え込むように俯いていたけれど、やがて小さく頷いて、繋いだ手をそっと握り返してくれた。
言葉は何もなかったけど、それだけですごく嬉しくなって。
自分でも機嫌が良くなったのが分かった。
「手さえ離さなければカズの好きなように動いていいからな」
でもそう言ってみても、すぐに“はい分かりました”といかないのがカズで。
もじもじするばっかりで全然動こうとしないから、俺から手を引いて再び歩き出した。
カズは俺の半歩後ろをついてくるだけだけど、手はしっかり握ってくれているし。
きっとしばらくすればまた慣れるだろう。