第5章 おとぎのくにの 3
でもカズは突然のことに驚いたのか
「ジュ…ジュンさま…?!」
悲鳴のような声をあげた。
そのまま慌てて手を離そうとするから、俺と手を繋ぐのがそんなに嫌なのかとムッとしてしまって。
でも手を離したくなくて、カズが引き抜けないように掴む手に力を込めた。
「おとなしく掴まってろ!」
ついキツい口調になってしまったら、ピタリとカズがおとなしくなった。
チラリと見れば困ったような顔で俯いている。
こんな言い方をしたら、カズには命令と変わらないって分かってる。
でもすぐに手を離そうとされたのが何だか悔しくて…
悲しくて…
俺だってちょっと傷付いたんだ。
「カズは俺と手を繋ぐのが嫌なの?」
「そんなことっ…嫌なわけありません!でも…」
聞いてみればすぐに否定してくれるけれど。
内心どう思っていたって、カズの立場で嫌だなんて言えるわけない。
何となく流れる気まずい空気を打ち破ってくれたのはトウマだった。
「カズさま?ジュンさまはカズさまのことを心配されているんですよ」
「心配…ですか?」
穏やかにカズに話し掛けると、カズは戸惑ったようにトウマを見つめた。
「ええ、カズさまは人混みに慣れていらっしゃらないでしょう?ですから、カズさまがはぐれてしまったり、怪我をされたりするんじゃないかと心配なんです」
トウマは俺の心が読めるんだろうか?
俺の考えていたことそのままを口にした。