第5章 おとぎのくにの 3
「申し訳…」
「謝らなくていい」
カズが泣きそうな顔で尚も謝ろうとするのを遮って
「風に当たれば少しは良くなると思うから」
ふらつく体を支えながら馬車からおりると、そこはちょうど花が咲き乱れる原っぱだった。
トウマはカズを一目見てすぐに状況を把握したようで、俺が何か言う前に敷物を敷いてくれたので、そこにカズを座らせる。
するとサッとトウマが水の入ったコップを差し出した。
「カズさま、お飲みになってください」
「ありがとうございます」
カズは素直に受け取ると、コクコクとゆっくり飲み干した。
ホッと息を吐いたカズの顔色はまだ決して良いとは言えないが、少しはマシになった気がした。
「もう少し飲まれますか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます、トウマさま」
頭を下げるカズにトウマがにっこり微笑みかけた。
「トウマで結構ですよ。敬語も必要ありません」
「そんな訳には…… それに、それを言うのは私の方です。私はただの侍女です。騎士さまに敬語を使っていただくような身分ではありません」
なんだとっ!?
なんだか嫌な話の流れについトウマを睨んでしまった。
2人の言ってることは分かる。
でも、だからと言って黙って聞いてるわけにはいかない。
「おい、トウマ!お前図々しいぞ!俺だってカズにはさま付けでしか呼ばれたことがないのに、なんでお前が…!!」
「ジュンさま…ヤキモチですか?」
俺が怒っても慣れてるトウマは全く気にしない。
それどころかニヤニヤして明らかに面白がってる様子に苛立ちが募る。