第5章 おとぎのくにの 3
楽しくて話も弾む。
まぁ、カズは俺の話に相槌を打つくらいだけど。
そんなのいつものことだし。
ニコニコと話を聞いてくれるだけで俺は嬉しい。
でも俺は浮かれすぎていたんだ。
だからにこやかな表情に騙されて、気付くのに時間が掛かってしまった。
元々カズは口数が少ない方とは言え、それにしても喋らなさすぎじゃないかとふと思って。
改めて見たカズの顔色は真っ青だった。
額には脂汗まで浮かんでいる。
「カズ!どうした!?気分が悪いのか!?」
「……いえ、大丈夫です」
慌てて問いただすと、弱々しい声で答えながらそれでもまだ笑みを浮かべようとする。
きっと酔ってしまったんだろう。
カズは馬車に乗るのも初めてなんだ。
この揺れは慣れていないカズには辛かったのかもしれない。
「どう見ても大丈夫じゃないだろ!どうしてすぐ言わないんだ!」
「……申し訳…ありません…」
つい声を荒らげてしまい、青い顔で頭を下げるカズを見てまた後悔する。
どうして俺は同じことを繰り返してしまうんだ。
カズが自分から言えるはずがないのは分かりきったことなのに。
腹立たしいのは気付くことが出来なかった自分であって。
その怒りをカズにぶつけるなんて、ただの八つ当たりだ。
「違う…ごめん!俺が気付かなかったのが悪い!少し休憩しよう」
トウマに声を掛けてすぐに馬車を止めさせた。