第5章 おとぎのくにの 3
でも今それを言ってもカズは納得しないだろうし、下手したら行くのをやめると言い出しかねないから。
「まぁ、そんなに心配しなくて大丈夫だよ。今日はコイツが一緒だから」
わざと明るい声を出し、後ろに控えている男を指さした。
つられるようにカズとサトの視線がそちらを向く。
「ちょっと、ジュンさま…コイツじゃなくてちゃんと紹介してくださいよ」
急に注目された男…トウマはブツブツ文句を言いながらも一歩前に出ると、サトとカズの前に片膝をついて頭を下げた。
「初めまして、サトさま、カズさま。本日護衛を務めさせていただきますトウマと申します」
「初めまして、トウマ」
サトがにっこり笑って応える。
その隣でカズは静かに頭を下げた。
「私たちのことを知っているの?」
「はい、もちろん。お二人の噂はかねがね伺っておりましたので、お会い出来て光栄です」
「噂?」
トウマは楽しそうだが、サトもカズも不思議そうな顔をしている。
「トウマは俺の乳兄弟なんだ」
「まぁ!私たちと同じなのね!」
補足すると、サトの顔がパッと輝いた。
トウマは俺の1歳下で。
幼い頃は本当の兄弟のように育った。
兄しかいない俺にとってトウマは弟のようでもあり、親友でもあり。もちろん主従関係でもある。
まさにサトとカズの関係と同じなのだ。
まぁ男同士だから、サトたちほどベッタリではないけれど。