第5章 おとぎのくにの 3
サトは赤い顔のカズを微笑ましそうに見ていたけれど、ふっと真顔に戻ると俺に真剣な顔を向けた。
「ジュン、今日はカズをよろしくね」
その目には心配の色が浮かんでいる。
そうだよな…
サトにとっても外は未知の世界。
それでも俺を信じて大切なカズを預けてくれるんだ。
俺はサトの信頼に応えなきゃいけない。
「うん、任せて。俺の命を懸けてでもカズのことは守るから」
「ジュンさまっ!」
少しでもサトが安心するようにと胸をドンと叩いたら、何故かカズが真っ青になった。
さっきまで真っ赤だったのに忙しい。
「なんだ?」
「なんだではございませんっ!冗談でもそのようなこと仰らないでくださいっ!」
「…冗談?」
何やら怒っているようだが、カズが一体何が気に入らなかったのか分からなくて首を傾げてしまう。
「命を懸けるだなんて…」
「ああ、それは冗談ではない。本気だ」
「なお悪いではないですか!」
続いた言葉を胸を張って訂正したら、カズが悲鳴のような声を上げた。
「ジュンさまの御身より大切なものなどありません!私のことなどどうでもいいのです。どうかご自分の身を守ることだけを考えてください」
目に涙を溜めて泣きそうになりながら訴えられるが、俺はそんなカズが愛しくてたまらないんだ。
だからカズがなんと言おうと、もし何かあったら俺は身を挺してでもカズを守るよ。