第5章 おとぎのくにの 3
「ジュンさま、本日は私のためにありがとうございます」
出迎えてくれたカズは緊張を隠せてはいなかったけれど、若干強ばっているものの笑顔を見せてくれた。
どこか腹を括ったようなその顔は、外出を嫌がってはいなさそうで。
それどころか少し前向きな感じすらして。
残っていた不安が消えていく。
サトに視線を向けるとサトもこちらを見ていて、目が合うとにっこりと微笑んだ。
どうやって説得してくれたのかは分からないけど、サトが手を尽くしてくれたのは間違いないはずだ。
感謝の気持ちを込めて頭を下げれば、サトはますます笑みを深くした。
改めてカズに向き直り、その姿をじっと見つめる。
今回は身分を隠しての外出だから、俺もごくシンプルな木綿のシャツにズボンという出で立ちだが。
ドレスではなく素朴なワンピースに身を包み髪をおろしているカズは、だいぶ雰囲気が変わりいつもより少し幼く見える。
「ジュ、ジュンさま…?」
観察するようにじっと見つめていたら、カズが身の置き所がなさそうにソワソワしだして。
「そういう格好も似合うな…すごく可愛い」
思わず感想を声に出てしまったら、カズの顔がボンっと赤くなった。