第1章 おとぎのくにの
ふと気付いたら、カズも隣で髪を結い上げられ、私と色ちがいのお揃いのドレスに身を包んでいた。
「今日もカズとお揃いね」
声を掛けてもカズは浮かない顔をしている。
ドレスも似合っていてとても可愛らしい姿なのに、こんな顔をしていたら台無しだ。
「どうしてそんな顔をしているの?」
「今日のお客さまがどなたかサトさまもご存知ですよね?」
「ええ、王妃さまと王子さまでしょう?」
「私は侍女ですよ?侍女の私がサトさまとお揃いのドレスを着ているなんておかしいでしょう?」
カズが泣きそうな顔で訴えてくる。
「おかしくないよ?とても似合っていて可愛い」
「可愛いとか可愛くないとかそういう問題じゃないんです!こんな···自分の身分もわきまえずにこんな格好して···高貴な方々に失礼です···不敬です···」
「でもお母さまに着るように言われたのでしょ?」
カズは力なく頷いた。
「お母さまの命令なんだから、カズは堂々としていればいいの」
お母さまはとても優しいけれど、一度言い出したら曲げないところがある。
カズはいつも私とお揃いのドレスを着ているが、それも姉妹ごっこをしたいお母さまの趣味だ。
私はカズのことを本当の妹のように思っているから、姉妹ごっこもとても楽しいのだけれど。
カズは身分を気にして恐縮してしまうようで、一向に慣れない。
「その格好ということはカズもお茶会に参加するってことでしょう?カズが一緒だと私もすごく嬉しい」
「私が···お茶会に参加···?」
なんとかカズの気持ちが上がればと思ったけれど、そこまで考えていなかったのかカズは青ざめてしまった。
「私と一緒に礼儀作法の講義を受けているのだから問題ないでしょ?」
「問題しかありませんよ···」