第5章 おとぎのくにの 3
いくら公爵夫人の許可があったとしても、あの忠義心のかたまりみたいなカズがサトを差し置いて自分だけ出掛けることを了承するだろうか…
現にカズから届いた返事には、はっきりとした断りの言葉こそなかったものの、どう読んでも楽しみにしている感じはなく。
それどころか出来れば行きたくないという空気すら漂っていた。
その手紙で心が折れかけて、やはり出掛けるのは止めようかとすら考えた。
カズが喜ばないのなら意味がないから。
そんな落ち込む俺の気持ちを浮上させてくれたのは、ショウ兄さんが見せてくれたサトからの手紙だった。
カズは決して行きたくないわけではない
未知の世界への恐怖心もあるけれど
私が行けないことを気にしているだけで
本当はジュンの誘いを嬉しく思っている
どうか私に任せてほしい…
それは俺を励ますような内容で、最後は頼もしい言葉で締められていて。
その手紙に力をもらった俺は、サトの言葉を信じて予定通り計画を進めていった。
あっという間にその日はやってきて。
カズを迎えに行く馬車の中、楽しみでドキドキしている反面、不安も完全には消えていなくて。
サトは本当にカズを説得出来たのだろうか…
もしカズが少しでも嫌そうな顔をしていたらどうしようかと、ネガティブな考えが頭から離れない。
モヤモヤしているうちに馬車は公爵邸に到着した。